侍達の夜明 のべるわんでいのお部屋

更新は不定期ですが、雑記・観光・訪問記録など。古典を学び、ポール・セザンヌを研究し、日本の自然を描く。洋画家。日本画家。タイトルは、自作のSF時代小説からきております。立命館大学 法学部卒 法学士

カテゴリ: 侍達の夜明け【第2部】

忍は、島と半蔵の包囲をせばめている。 「そちの飼い主家康はそう申しておったか。・・・・・・なるほど。ならば、拙者はこれ以上隠し立てする必要もない」 島は半蔵を見上げ、すっと立ち上がる。 「拙者は石田三成が手の者。島と申す。服部殿を男と見込み、世 ...

島左近は、半蔵の座る同じ視線になるため、静かに座り込む。 小刀が突き刺さった天井の隙間からは、真裏に隠れていた忍の額から割れた血が、つつーぅっと小刀の柄を伝い、やがてそれは真下に座り込む左近のそばにぽたりぽたりと落ちている。 左近は、半蔵の大きな ...

島は小刀を畳の角に当て、一畳分勢いよく持ち上げる。小刀を口にくわえた島は畳を正面に据え両手で持つと、入ってきた影の集団の刃を畳で受けた。 畳を刺し通す、数本の刀。切っ先が島の腹、数ミリのところで止まっている。そのまま刺し通されては、あの忍びの者と同じこ ...

江戸城の中。 座の仕切り襖から黒袴に黒頭巾、刀を振り構えた忍が次々と現れ、座する商人姿の島左近を取り囲みはじめる。 服部半蔵の影の集団である。 屈強な体と多様な武器を使い回すことで棟梁である半蔵の手となり、その俊敏な動きと嗅覚力にて半蔵の耳となる ...

政宗は、にやりと笑い 「上様は、そなたのような美しきにょしょうを、いつもおそばにつけておられる。私に鞍替えせぬか?」 茶阿の持つ切っ先が、政宗の首筋を伝い、そのほほに当たった。 茶阿は目を細め 「そなたの智勇は、上様を超えているのか?」 ...

※ 成実が、三和土に先にあがる。 廊下に続く板間は、ひんやりと草履を脱いだ素足に気持ちよく伝わった。政宗も草履を脱ぎはじめる。その彼に、にやりとする。 「兄者、賭をせぬか?」 「賭?」 政宗は立ち上がり、ひょこひょこ歩くひょっとこならぬナマコ主 ...

伊達政宗は茶屋の前で、佇んでいる。 成実は、政宗の袖を引いた。 「・・・・・・間違いない、絶対あれはお茶阿の局だ」 政宗は成実に振り返った。 「家康が中にいるという証でもあるというのか?」 「兄者はみておらんかったのか!」 成実は、足音をころして ...

☆ 本多正信が、客間に島左近を通した。島が正信より先に床に尻を敷く。 島は座った時、胃のあたりに鈍痛が走ったのか、一瞬苦痛にゆがんだ顔でヘソの上あたりを押さえるが、また何気ない表情に戻った。 振りかえりざま腰をすとんとおろすと、手に持っている文 ...

☆ 島左近は、小石川橋を渡り江戸城の城門前に立った。城門の両脇には、番兵が槍を構えて立っている。先ほど籠が出てきた表門と異なり、数箇所ある門の内でかなり小さな門であった。 その門前には、軍笠をかぶった痩せた兵と太った兵が槍を小脇に抱え突っ立っている。 ...

      ☆ 呉服屋の中で、佐竹義宣の目に色とりどりの生地がまばゆく映っている。 桜色の下地に白の花びらをまぶした小紋の柄が特に珍しい。 佐竹義宣は、店の主人から生地を受け取り、目を細め眺めている。 その様 ...

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